定年が近づいてきたころ、私は再雇用を「続けるだけ」のことだと思っていた。
特別なことをするわけでも、どこかへ転職するわけでもない。今の会社にそのまま残る。ただそれだけのことだと。給与が下がることはわかっていたし、生活を少し引き締めればなんとかなると思っていた。
甘かった。本当に、甘かった。
額面56万円が26万円になる、ということ
現役のとき、私の月の額面は56万円だった。健康保険・厚生年金・所得税・住民税が引かれて、手取りはおよそ42万円ほど。長く働いてきた実感が、その数字にはあった。
再雇用後の提示額は26万円。最初に聞いたとき、「まあそんなものか」と思った。半分以下になることは覚悟していたし、「月26万ももらえるなら生活できる」と、なんとなくそう計算していた。
でも、「26万もらえる」と「26万から引かれる」は、まったく別の話だ。
試算してみると、こうなった。
| 控除項目 | 金額(月額) |
|---|---|
| 健康保険料 | 約13,000円 |
| 厚生年金保険料 | 約23,800円 |
| 雇用保険料 | 約1,600円 |
| 所得税 | 約4,000円 |
| 住民税 | 約20,000〜25,000円 |
| 合計 | 約62,000〜67,000円 |
| 手取り | 約193,000〜198,000円 |
約19〜20万円。これが、額面26万円の現実だった。
現役時代と比べると、手取りで22万円以上の差になる。「給与が下がった分だけ生活費を減らせばいい」という私の読みは、根本から外れていた。
住民税の「時差」に気づいていなかった
特に見落としていたのが、住民税の仕組みだった。
住民税は「前の年の所得」をもとに計算される。つまり再雇用になって給与が大幅に下がっても、最初の1年間は現役時代の高い所得に対して課税された住民税が、そのまま引かれ続ける。
給料は下がっているのに、税金は去年の給料で計算される。
この仕組みを、私はちゃんと理解していなかった。頭のどこかで「収入が減れば税金も減る」という単純な計算をしていたのだと思う。実際には、収入が減った年の翌年まで、その影響は出てこない。
再雇用1年目は、手取りがさらに少なくなる可能性がある。これは、定年前に必ず知っておいてほしいことのひとつだ。
こういう「見えないコスト」を、定年前に整理しておくために、私は家計ノートをつけ始めた。毎月の収支を書き出すだけで、頭の中がずいぶん整理される。
健康保険・厚生年金の重さ、改めて気づいた
現役のころ、社会保険料は「当たり前に引かれるもの」として意識していなかった。給与明細を見ても、手取りの欄だけを見ていた。控除の内訳を、真剣に読んだことがなかった。
再雇用後の試算をして、初めてじっくり向き合った。
健康保険と厚生年金だけで、毎月3万6千円以上が引かれる。額面26万円の、7人に1人分以上が社会保険料として消えていく計算だ。
「それくらい知っていた」という人もいると思う。でも「知っている」と「手取りの数字として目の前に並べてみる」は違う。私は並べてみて、初めてその重さを実感した。
「他の道もあったのか」と、今でも考える
正直に書く。私には再雇用以外の選択肢が、ほぼなかった。
手に職があるわけでも、独立できるスキルがあるわけでもない。長く会社員をやってきて、気づけば「会社がある」ことを前提に生きてきた。定年が近づいてから「転職しよう」「フリーになろう」と思っても、現実はそう簡単ではなかった。
だから再雇用を選んだ。正確に言えば、選ばざるを得なかった。
今から思えば、50代のうちにもっと真剣に考えておけばよかった。給与が下がることではなく、「その後の自分が何で稼ぐか」を。会社員としての収入だけに頼り続けることの、リスクを。
再雇用の給与試算をしながら、そんなことを考えた。
今、ブログを書いている理由
だから今、こうして書いている。
ブログが稼げるかどうか、正直まだわからない。うまくいく保証もない。でも「何もしないより、動いてみる」という気持ちだけは本物だ。手取り19万円という現実を前にして、じっとしているよりは動いていたい。
うまくいくかどうかよりも、動いているかどうかの方が、今の自分には大事な気がしている。
50代後半で、手に職もなく、再雇用の1択しかなかった自分が言えることは多くない。でも、同じような立場の人に、この数字を見てほしいとは思う。「こんなに引かれるんだ」と、定年前に一度でも知っておいてほしい。
驚くなら、明細を見てからより、先に計算してみてからの方がずっといい。
今は毎月の収支を手帳に書き出すことを習慣にしている。頭で不安を抱えていても何も変わらない。書き出すと、少しだけ現実と向き合える気がする。
まとめ|定年前に一度だけやってほしいこと
再雇用を選ぶ前に、手取りの試算を一度やってみてほしい。
額面ではなく、健康保険・厚生年金・住民税・所得税を引いた後の金額を。それが毎月の生活費をまかなえるかどうかを、定年前に確認する。計算するだけでいい。それだけで、心の準備がまったく変わる。
私は59歳になってから気づいた。遅くはないが、もう少し早くてもよかった。
再雇用は「続けるだけ」ではなかった。収入の仕組みが変わる、という話だった。それをもっと早く、真剣に考えておけばよかったと、今は思っている。
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