「ねんきん定期便、ちゃんと見たことありますか?」
妻にそう聞かれたのは、去年の秋のことだ。毎年誕生月に届くあの封筒、私はずっと開封せずに引き出しに入れていた。「どうせまだ先の話」と思っていたからだ。
でも定年まであと1年となった今、さすがに無視できなくなった。重い腰を上げて、はじめてちゃんと向き合った。そのときの話を正直に書く。
ねんきん定期便を初めてちゃんと開いた日
封筒を開けると、A4の紙が数枚入っていた。表には「これまでの加入実績に応じた年金額」という欄がある。
数字を見て、正直、思ったより少なかった。
私の場合、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた見込み額が年間で約180万円台だった。月に換算すると15万円ほど。「老後は年金でなんとかなる」と漠然と思っていたが、15万円という数字を目の前にすると、急に現実感が出てきた。
妻にも自分の定期便を確認してもらった。妻はパートで働いているので、年金額は私より少ない。二人合わせると月20万円前後になる計算だったが、今の生活費と比べると、明らかに足りない。
ねんきんネットで詳しく確認した
定期便だけでは情報が限られると気づき、「ねんきんネット」に登録してみた。マイナンバーカードがあればすぐに使える。
ねんきんネットでわかったこと:
- これまでの加入月数と保険料納付記録
- 60歳・65歳・70歳それぞれで受給した場合の試算額
- 繰り上げ・繰り下げ受給による増減のシミュレーション
特に「繰り下げ受給」のシミュレーションが参考になった。65歳から受給すると月15万円ほどだが、70歳まで繰り下げると約21万円になる。1ヶ月繰り下げるごとに0.7%増える仕組みだ。
ただし、繰り下げるということは65〜70歳の間、年金なしで生活する必要がある。再雇用で働きながらつなぐのか、貯蓄を取り崩すのか——数字だけでなく、生活設計全体を考えなければいけないと気づいた。
私が感じた「3つの驚き」
①思ったより少なかった
「厚生年金があるから大丈夫」と漠然と思っていた。でも実際の数字は、今の生活費の半分程度だった。老後2000万円問題が話題になっていたが、自分ごととして実感できていなかった。見て初めて、足りないという事実が腹に落ちた。
②加入記録に空白期間があった
ねんきんネットで加入履歴を確認したところ、転勤直後の数ヶ月に記録が飛んでいる箇所があった。会社が手続きしているはずだと思っていたが、念のため年金事務所に問い合わせることにした。こういった記録の漏れは、確認しないとわからない。
③受給開始年齢でこんなに変わるとは思わなかった
繰り上げ・繰り下げの差がこれほど大きいとは知らなかった。60歳から受給すると月12万円程度まで減る。70歳まで待てば21万円になる。どちらが得かは単純には言えないが、「何歳まで生きるか」「何歳まで働けるか」という問いと直結している。
年金事務所に相談してわかったこと
記録の空白が気になったので、地元の年金事務所に電話した。予約制だったが、1週間後に面談できた。
担当の方は丁寧に説明してくれた。空白期間は会社の手続きの遅れによるものだったが、記録自体は正しく反映されていると確認できた。ひとまず安心した。
また、相談の場で教えてもらったこと:
- 在職老齢年金の仕組み(再雇用中に年金を受給すると、給与と年金の合計額によって支給が調整される場合がある)
- 加給年金(配偶者が年下で一定条件を満たせば、年金に上乗せされる制度)
- 妻が65歳になると加給年金はなくなる点
こういった細かい制度は、自分で調べるより窓口で聞いたほうが確実だと感じた。予約さえ取れれば、無料で丁寧に教えてもらえる。
確認してよかった、と思う理由
ねんきん定期便を引き出しにしまい続けて何年も経った。あの封筒を開けるのが怖かったのだと思う。知らなければ不安にならずに済む、という逃げ方だった。
でも実際に確認してみると、不安が消えたわけではないが、「何が足りていて、何が足りないか」がはっきりした。漠然とした不安より、具体的な数字のほうがずっと扱いやすい。
今は、65歳から受給しながら、不足分は貯蓄と再雇用中の収入でまかなう方向で考えている。繰り下げも選択肢としてあるが、70歳まで働き続けられるかどうか、体と相談しながら決めようと思っている。
59歳の私が思う、今やっておくべきこと
- ねんきん定期便を今すぐ開封する:引き出しにしまっている方、まず数字を見てください
- ねんきんネットに登録して試算する:マイナンバーカードがあれば5分で登録できます
- 加入記録に空白がないか確認する:特に転職・転勤経験のある方は要注意
- わからなければ年金事務所へ:予約して直接聞くのが一番確実です
定年まであと1年。やっておくべきことが、また一つ明確になった。
同じように「まだ先の話」と思っている方がいたら、今日、封筒を開けてみてほしい。知るのが遅いより、早いほうがいい。それだけは確かだと思っている。
「老後2000万円問題」を自分の数字で考えてみた
年金の確認をきっかけに、老後の収支を自分の数字で試算してみた。
現在の生活費は月27〜28万円ほどだ。食費・光熱費・通信費・保険・趣味の費用を合わせるとそのくらいになる。定年後は車の維持費や外食が増える一方、会社関係の支出は減るだろう。ざっくり月25万円を老後の生活費の目安とした。
年金が月15万円(妻分を加えると20万円)として、月5万円の不足。年間60万円、20年間で1200万円の不足という計算になる。「2000万円」という数字よりは少ないが、決して楽ではない。
この差をどう埋めるか。私が考えている方法は3つだ。
- 再雇用中に貯蓄を積み増す:給与は減ったが、生活費を絞れば月3〜5万円は積み立てられる
- 固定費をさらに削る:保険の見直し、通信費の節約で月1万円以上の余地がある
- 70歳まで何らかの形で働く:体が許す限り、小さくても収入を持ち続けることが一番の保険だと思っている
年金を確認したことで、ようやく「自分の老後」が具体的になってきた。怖いが、向き合ってよかったと思っている。
まとめ:封筒を開けることが、最初の一歩だった
ねんきん定期便を開封し、ねんきんネットで試算し、年金事務所に相談する——この3ステップを踏んだことで、老後のお金の輪郭がはっきりした。
わかったのは「足りない」という現実だったが、それを知ることで初めて対策が打てる。知らないままでは何もできない。
定年前の今、やっておくべきことはまだある。でも、あの封筒を開けた日が、自分の老後設計の本当のスタートだったと思っている。
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