毎月届く電気代の請求書を、ちゃんと見たことがあるか。
59歳になって、改めてそう問われたら、正直に言うと「ほとんど見ていなかった」と思う。電力会社から届く紙か、アプリの通知を一瞬目に入れて、「まあこんなものか」と引き落としに任せていた。それが当たり前だと思っていた。電気代は、払うしかないものだと。
気づいたのは去年の春、固定費を見直そうと思い立ったときだ。スマホ代、保険、サブスク——ひとつずつ洗い直していたら、電気代のところで手が止まった。12年以上、同じ電力会社から変えていない。検針票を出してきて過去12ヶ月分を並べると、月平均12,000円ほどかかっていた。「これ、変えられるんじゃないか」と初めて本気で思った。
電力自由化で「選べる時代」になっているのに
電力の小売自由化が始まったのは2016年。もう10年近く経つ。にもかかわらず、私は一度も乗り換えを検討したことがなかった。理由は単純で、「なんとなく不安だったから」だ。停電したらどうしよう、手続きが複雑そう、切り替えで電気が止まる日があるんじゃないか——今思えば、全部ただの「思い込み」だった。
実際には、電力線(送電設備)は今まで通り同じものを使うので、停電リスクは変わらない。手続きも、申し込んだら向こうが全部やってくれる。切り替え当日も、電気が止まる瞬間などない。それを知ったのは、電力比較サイトをじっくり読んでからだった。
実際に比較してみた
電力比較サービスでいくつかのプランを確認してみた。入力するのは「郵便番号」「現在の電力会社名」「月の使用量(kWh)」の3つだけ。5分もあれば終わる。うちの場合、月平均の使用量は約350kWh。試算の結果、いくつかの新電力で月2,000〜2,500円ほど安くなるプランが出てきた。
| 比較内容 | 現在(九州電力) | 乗り換え先 |
|---|---|---|
| 月の使用量 | 約350kWh | 約350kWh |
| 月額料金 | 約12,000円 | 約9,500円 |
| 差額 | — | 約△2,500円 |
| 年間差額 | — | 約△30,000円 |
年間3万円。10年続ければ30万円。「ちゃんと調べればよかった」と本気で思った。
切り替えで不安だったこと、全部書く
実際に申し込む前、正直まだ不安が残っていた。同じように迷っている方のために正直に書いておく。
「電気の質」は変わる? 変わらない。電力線(送電網)は全国共通のインフラを使うので、電気の品質に差はない。電力会社が変わっても、コンセントから出てくる電気は同じだ。
手続きが難しそう 申し込みはオンラインフォームに情報を入力するだけ。検針票があれば「供給地点特定番号」が載っているので、それを入力する。あとは新電力会社が手続きを進めてくれる。切り替えまでは1〜2ヶ月かかった。
解約の違約金は? 会社によって異なる。私が選んだプランは違約金なし。「縛りあり」のプランは解約時に費用がかかることもあるので申し込み前に確認が必要。
もし不満があったら戻れる? 戻れる。ただし料金プランが変わっている場合があるので、元のプランに戻るとは限らない点は注意。
実際に切り替えてから3ヶ月
切り替え後、最初の請求書が来たときは少し緊張した。封筒を開けると、金額は9,480円。前年同月は12,200円だった。体感として2,000円以上は確実に下がった。「思い切って動いてよかった」と素直に思えた。
ひとつ反省として残っているのは、もっと早く動けばよかったということだ。電力自由化が始まった2016年から今まで約9年、月平均2,000円×12ヶ月×9年=約216,000円を余分に払い続けていた計算になる。さすがにそう考えると、少し苦笑いが出た。
電気代を見直すなら、固定費全体の見直しと一緒に
電気代の乗り換えだけで月2,500円安くなった。これを機に、他の固定費も見直した。スマホをソフトバンクから格安SIMに変えたことで月約6,000円削減。保険の整理でさらに月5,000円浮いた。合計すると月1万円以上が手元に残るようになった。固定費の見直しは「一度やれば、あとは何もしなくていい節約」だ。食費を毎日切り詰めるような努力は不要で、一度動くだけで効果が続く。定年を前にした今、こういう見直しから始めるのが一番コスパがいいと実感している。
定年前に固定費を見直したら月1万円浮いた|59歳が実践した4つの節約術も参考にしてほしい。
節約効果を年単位で考えると
月2,500円の削減は、1年で30,000円になる。定年後20年間続ければ60万円だ。「たった2,500円」と感じるかもしれないが、年単位・老後全体で見ると、まったく違う数字になる。老後の生活費不足は多くの人が抱える悩みだ。電気代だけでなく、スマホ・保険・サブスクなど固定費全体を整理すると月1万円以上変わることもある。その1万円が年間12万円、20年で240万円になる。「固定費の見直し」が老後の資産形成に直結する理由がここにある。
実際に乗り換えた後、生活の何が変わったかを改めて振り返ると、「電気そのもの」は何も変わらなかった。コンセントに差せば電気が来る。エアコンも洗濯機も冷蔵庫も、以前と全く同じように動いている。変わったのは毎月の引き落とし金額だけだ。「電力会社を変えると何か不便になるかも」という漠然とした不安が、長年の行動を縛っていた。でも実際は、不便になることは何一つなかった。
難しいことは何もない。まず自分が今どんな固定費を払っているか書き出す。その中で「変えられるもの」を一つずつ確認していく。電気代はその中でも手続きが簡単で、効果がすぐ出やすい項目だ。「まず電気代から」始めることをおすすめしたい。59歳のこのタイミングで動いたことで、老後の家計を少しだけ軽くできた。それだけで十分だと思っている。むしろ「なぜもっと早くやらなかったのか」という後悔だけが残った。定年が近い今こそ、一歩踏み出すのにいいタイミングだ。
電力会社の選び方で一点だけ強調しておくと、燃料調整費の扱いに注意してほしい。2022〜2023年のエネルギー価格高騰のときに、新電力の一部で「上限なし」のプランが大幅値上がりした経緯がある。今は落ち着いているが、プランを選ぶ際は「燃料調整費の上限あり」か確認しておくと安心だ。また、再生可能エネルギーを使ったプランを選ぶことで環境への貢献も同時にできる会社もある。料金だけでなく、こういった面から選ぶのも一つの考え方だ。
電気代の見直しをきっかけに、固定費全体を整理した。一度動き始めると、次の見直しへのハードルがどんどん下がる。「どうせ変わらない」と思っていたことが、実は簡単に変えられることだと気づいた。59歳の今だからこそ、動いてよかったと思っている。
まとめ
電気代を12年以上、「言われるがまま」に払い続けてきた。それを変えたのは、固定費全体を見直そうと思い立ったことがきっかけだった。乗り換えの手間は30分もあれば十分。切り替えが完了してからは、自動的に安い料金になる。停電リスクもなく、不満があれば戻れる。「不安だから変えない」を続けるコストのほうが、よほど高くついていた。
スマホの乗り換えについては59歳が一括払いで機種代を清算してキャリアを変えた話にまとめた。電気代に続いてスマホも整理したことで、月の固定費が大きく変わった。
保険の見直しについては59歳で保険を3つ解約したら月5,000円以上浮いた話も読んでほしい。電気・スマホ・保険の3つを整理するだけで、月1万円以上変わってくる。


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